耳吊り風景

ホタテの養殖作業「耳吊り」を業務別に説明してみた。

Pocket
LINEで送る

こんにちは、Local Times編集部です。

 

日本でもトップクラスのホタテの漁獲量と売り上げを誇る、北海道の八雲町では、ホタテの養殖業務でも最も重要な「耳吊り」と呼ばれる作業が毎年3月~6月にかけてたくさんの漁師の家で行われています。

 

前回下の記事で耳吊りの内容をざっくりと説明しましたが、耳吊りは船の上での作業など実は業務が複数存在します。

ホタテの養殖作業「耳吊りとは」

 

その耳吊りの業務は大きく分けて4つに分類できます。各漁師さんで若干仕事内容に違いはありますが、今回は私が耳吊りを体験させて頂いた八雲町東野の大寺漁業部の仕事を中心に耳吊りの仕事をもっと深堀して行きたいと思います。

 

 

最も過酷だが高額給与の「沖歩き」

沖歩き

 

耳吊り期間中最も過酷で最も稼げる業務を「沖歩き」と言います。他にも「のりこ」や「船乗り」などと呼ばれることもあります。これは耳吊りを支える漁師さんのメインワークで、長時間労働力仕事がかなりしんどい業務です。

 

朝は2時前後にスタートし、なんと17時前後くらいまでかかるんです!もちろん休憩はありますが、忙しい時はほんの少ししか休憩がないです。

 

さらに、ホタテのたくさん入った20kg以上のカゴやロープを持ったりする力仕事はもちろん、船の上での業務も多くあるため、船酔いとも戦わなければいけないのです。

 

その沖歩きの人の仕事は大きく分けると3つ存在します。

ホタテの成貝の買い出し(出荷)

1つ目の仕事はホタテの「買い出し」です。これは大きくなったホタテの貝(2年貝)を出荷する作業です。

 

買い出しでは、まず朝の2時前後に船に乗って出航します。そして、去年耳吊りで吊るした貝が沈んでいる場所にいき、一本一本引き上げて行くのです。最終的には機械がロープを引き揚げるのですが、機会にロープを巻き込むまでは人の手でやるので、これがまた中々重いのです。

ホタテの引き上げ

 

「人の手で丁寧に括り付けられたホタテはどうやってとるの?」って疑問に思った人がいると思いますが、それは機械で完全にぶっちぎるのです。結構強引ですね。

機械

 

そうやってロープから取れたホタテの成貝は機械で大きさを選別されて、さらに人間の目でも選別します。この業務をひたすらやり続けるわけですが、これだけでも2時間半くらいもかかるのです。

選別機         選別作業

 

漁港に帰ってからは、引き上げてきたホタテを網に入れたまま纏めてトラックに乗せて出荷します。漁師さん曰く、この買い出し作業があるかないかで1日の疲労度がだいぶ違うらしいです。そのくらい大変な作業なのです。

 

大変ですが、作業の合間に朝日が水平線から登ってくるのを見られるので、かなり幸せな光景を目撃することもできるのです。

朝日

 

稚貝の吊るし

2つ目の仕事は稚貝の「吊るし」です。これは、ホタテの稚貝がたくさん括り付けられた一本のロープを、海に吊るしに行く業務です。

 

各漁師さんの自分の海域には、「ケタ」と呼ばれる極太のロープが浮いていて、そこにホタテがついた細いロープをいくつも括り付けて行くのです。こうして「ホタテのカーテン」と呼ばれるものが出来上がるのです。

吊るし

この作業は基本的には1時間前後くらいかかり、一日に数回行きます。

僕はこの作業を手伝って完全に船酔いになりました。下を向く作業なので、結構酔う人は酔います。

 

稚貝の搬入

3つ目の仕事は耳吊りをするための稚貝を陸揚げすることです。この稚貝は、「まるカゴ」や「ザブトン」と言われるカゴに入っていて、カゴを海から上げる作業とカゴから稚貝を出す作業の2つがあります。

 

まるカゴから稚貝を出すのはかなり力がいる仕事です。「カゴほろい」と言うのですが、これは沖歩きで一番体力的にきついといっても過言ではない業務です。耳吊り期間は3ヶ月ほどありますが、後半の方がカゴに付く付着物が大きく、貝も大きいので格段に重さが違います。僕はこの作業をやる度に次の日に筋肉痛になっていました。良いトレーニングではありますね!

かごほろい

そして、ザブトンから稚貝を出すのはまるカゴほろ力はいりませんが、かなり時間がかかるのでこれはこれで大変です。作業時間がかなりかかるので、出荷作業がなくてもザブトンのおかげで朝がものすごく早くなります。

 

このように、沖歩きには大きく3つの作業があります。買い出しは朝一に一回やるだけで、耳吊り期間も前半のみの作業となります。稚貝の搬入は買い出しの後や、昼前や昼後など、多いときは1日に2回か3回やるときもあります。

 

吊るしは、稚貝が括り付けられたロープがたまらないと行けないので、基本的には午後前に一度、そして、ごごに2度の合計3度くらい1日に行きます。

 

もちろん1度の出航で買い出しと稚貝の搬入を一緒にやったり、吊るしと搬入を一緒にやったりしますが、それでも1日に数回沖と陸を往復しなければ行けないきつい仕事なのです。

 

 

力仕事とお世話役の陸周り

陸周り

 

次に陸のみの作業とはなりますが、力仕事がメインで、他のバイトさんのお世話役もやる「陸周り」と言う仕事を紹介して行きます。これもかなり体力的にはしんどい仕事です。

 

陸周りの仕事は各漁師さんによって仕事の始まる時間時は違います。早い所だと3時とかからやっていますし、遅い所でも通しの人よりは少し早い時間からやっています。

 

陸周りの人たちの業務は大きく分けて4つあります。

 

カゴほろい

1つ目は沖歩きの人もやっているカゴほろいです。カゴほろいは最も重労働で過酷な業務なので、沖歩きの人と陸周りの人と一緒にやることが多いです。漁師さんによっては船の上でやってくる所もあるのですが、私が行っていた漁師さんの所では、漁港でやっていました。

 

稚貝の選別

2つ目は稚貝の選別作業です。

 

カゴから出された稚貝には、ロープにくくりつけるには小さすぎる稚貝や死んでいる稚貝など色々な稚貝が含まれています。そこで、選別専用の器械を使って自動で使える稚貝と使えない稚貝に選別するのです。

選別

器械を使いますが、稚貝が満杯に入った20kg以上もあるカゴを運んだりするので、結構力は使う作業になります。

 

通しの人たちへの稚貝の補充

3つ目の仕事は、通し(稚貝をロープにくくりつける作業)をしている人たちへの稚貝を補充する作業になります。

 

通しをしている人たちは基本的には女性が多く、稚貝がたくさん入ったカゴを持つのは大変なんです。それだけでなく、通しの人はスピードが命で、決められた時間でどれだけ多くの本数をこなせるかによって生産性が変わってくるので、効率を上げると言った意味でも通しをしていない人がホタテを補充してあげることが重要となってくるのです。

稚貝の補充

 

その他雑務

陸周りの4つ目の業務は、その他残っている雑務です。雑務の内容は各漁師さんごとに違ってきます。

 

基本的には通した稚貝を運んだり、カゴやロープが足りなくなったら補充したり、水槽の掃除など細かい作業がたくさんあります。なので、陸周りをする人はある程度周りの状況を常に把握して、その時々にあった対応を求められます。そのため、臨機応変に対応できる人が一番合っていると言える業務です。

 

このように、陸周りの仕事はかなり様々な業務を担当するので、重要な役割を担っています。

 

 

女性が活躍できる通し

耳吊り通し

 

3つ目の仕事は耳吊りのメインともなる「通し」と呼ばれるホタテの稚貝に空いた穴に糸を通していく作業になります。

 

八雲町で耳吊りと言えば、大抵の人はこの作業のことをイメージするでしょう。小学生からお年寄りまで、たくさんの人が耳吊りに携わっていますが、そのほとんど(8割)がこの通しの作業をしています。

 

この通しの作業には人が多ければ多いだけいいので、漁師さんも例年できるだけ通しをしてくれる人をたくさん探そうとします。それでも中々希望している人数が集まっていないのが現状です。

 

給与は耳吊りの他の業務に比べれば一番低いですが、時給ではなく本数でカウントする出来高払いなども可能です。早い人は大抵出来高にして昼休みも惜しんで作業をしていたりします。

 

小さな穴に糸を通すという作業は手先の器用さを求められるので、基本的には男性よりも女性が向いています。なので、耳吊りは、ある意味女性が一番活躍できる仕事でもあるのです。

 

 

淡々とホタテと器械と向き合う穴あけ

耳づり穴あけ

 

最後の仕事は稚貝の耳に器械を使って穴を開ける作業の「穴あけ」です。

 

この作業は基本的には男性が担当することが多いのですが、通しの人たちよりも少し早く来て、ひたすら器械を使ってホタテの耳に穴を開け続けます。

 

穴あけの器械は種類が合って漁師さんによって少し違ってくるのですが、基本的には、ベルトコンベアみたいな所にホタテを表向き(黒い方)にして置くだけで器械が穴を開けてくれる器械を使っているところが多いです。この器械だと素人でもすぐに仕事ができるのでとても効率的です。

 

その他には、ミシンのような器械で、針に直接ホタテを持っていき穴を開ける器械も多く使われています。こちらの器械はかなり技術がいる器械で、素人だと上手く穴が開かなかったり、針を折ってしまうので慣れるまで苦労します。

穴あけて開け

 

このように、通しの人たちに穴を空いている稚貝を提供するためにはある程度の穴あけをする人たちも必要なのです。人が足りない時は沖歩きや陸周りの人が穴あけをしたりします。それでも通しの人が多かったりすると、穴あけが追いつかず、稚貝がなくなったりするので、漁師さんも気をつけなければいけません。

 

 

まとめ

以上、ホタテの養殖作業、耳吊りの4つのメイン作業でした。紹介したように、4つのそれぞれの仕事によって耳吊りという養殖作業が支えられているのです。そして、この3ヶ月を乗り越えるにはそれぞれの仕事に普段は使っていない人が必要になります。

 

なので、毎年漁師さんは3ヶ月限定でたくさんの人を短期雇用します。基本的には家族や親戚で今までは回していましたが、少子化と高齢化でそれだけでは回らなくなって来ました。

 

今後は親戚や町内の人だけでなく、町外や国外の人も関わっていかないと難しくなってくる作業になります。

もっと耳吊りという作業が日本中、世界中に広まり、たくさんの人が経験できるようになってくれればいいなと思います。

 

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です